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ミュンヘンに吹く風 4
 小さなベトナム料理屋に入ると、マークはベトナム風チキンフライ、俺は炒め物を注文した。
「ブダペストで温泉には行ったかい?」
「ゲッレールト温泉に行ってきました。気持ちよかったですよ。今日は何をしていたんですか」
「近くの町のオルガンビルダー(※オルガン工房でオルガン製作に携わる人)に会ってきた。オルガンの構造は非常に興味深いものでね。明後日はミュンヘンの教会で演奏会だ」
 ブダペストにいるときもそうだったが、音楽の話をする彼はいつもいきいきとしていた。
「音楽家は給料のいい仕事じゃないが、一日15時間位は音楽のことを考えていられる。私にとってはこれが最高に幸せな生活だ」
 天職に出会った人間はこういう表情をするのだろうか。英語講師の仕事は嫌いではなかったが、そんな風に仕事を語れる彼がうらやましかった。
「よかったら、明日一緒にパッサウという町に行かないか。12時から聖シュテファン大聖堂で観光客向けにミニコンサートがある。聖堂にあるオルガンの中では世界最大だから一見の価値はあると思うが。ドナウ川もきれいだろう」
 一人旅をする予定だったが、どのみちミュンヘンの近くの町を巡ろうと思っていたし、彼と行動を共にすることにした。
 食事が運ばれてくると、マークは箸で器用に白米を食べている。関心して見ていると、彼は食事をする手を止めた。
「どうかしたのか」
「いや。あなたといると、初めて会った気がしないんです」
 ブダペストで会う前に、この男を見たことがある気がする。特別顔に見覚えはないし、オルガニストの友人はいないはずだ。
「すみません、変なことを言って。忘れてください」
 しばらく俺たちは無言で食事を続けた。男相手に妙なことを言って後悔していたが、どうしてもマークのことが心にひっかかっていた。

 帰りにミュンヘン駅で時刻表を調べ、パッサウ行きの切符を買うことにした。
「ドイツ語はできるんですか」
「ドイツ語とイタリア語は大学時代に学んだ。クラシックを研究するにはある程度必要だからね」
 そう言って自動販売機で往復の切符を買うと、自分の分を買おうとした俺をマークが止めた。
「二人分買っておいた。私と一緒に来るんだから払わせてくれ」
「でも・・・」
 これでも給料をもらって働いているんだが・・・とりあえず礼を言って引き下がることにした。
「今日は移動で疲れただろう。早く寝るといい。私はちょっと用事があるから出かけてくる」
 そう言ってマークとホテルの前で別れた。フロントで鍵を受け取ると、部屋に戻るとそのままベッドに倒れこんだ。
「やれやれ・・・」
 何だかんだ言って飛行機での移動は疲れる。そろそろ年かとため息をついてベッドに潜り込むと、あっという間に眠ってしまった。
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Comment

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ちょっと強引♪
マークってば紳士的だけど、なかなか強引w
過去に接点があったみたい?
クリスにはあんまり印象に残ってないみたいですけど...
もう少し一緒に過ごす内に分かってくるのかな?

(教頭のお相手、新キャラなんですね。安心しました〜♪)
| URL | 2008/06/25/Wed 23:05[EDIT]
お返事です
蛍さん:
マークはどこまで紳士でいられるんでしょうか(汗)
教頭先生のお相手は、海の向こうからやってきます。
tategoto910 | URL | 2008/06/26/Thu 08:11[EDIT]
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