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英語講師のヒンカク 2

 高校の教員玄関前まで着くと、僕は勝負に出ることにした。

「高野先生、よかったら今日お昼一緒にどうですか。何かお礼をさせてください」

「そんなに気を使わないでくれ。でも近くにおいしい蕎麦屋があるから一緒に行こうか。4限が終ったら講師室まで行くから」

「わかりました」

 僕の受け持ちは1限から3限までだったが、採点や教案作りでお昼くらいまでかかりそうだ。

「それじゃお昼に」

「おう」

 教員室に向かう彼の後姿を、思わず見つめてしまった。

 

 僕は非常勤とはいえ、浜野の代行なので他の常勤の教師並みの仕事量が課される。

(体のいい労働搾取じゃないか。私立なのにケチくさいなあ)

 諦めをつけて担当の文法の授業の宿題の採点を始める。学期末試験の問題も作らなければいけない。

「こんな仮定法なんて、いまどき日本の入試くらいにしか出ないだろ」

 大学院で学んだアメリカ式の英語教授法とは大分やりかたが異なる。教科書やカリキュラムが大学入試を意識しているのは仕方がないが、理想と現実のギャップがありすぎる。

 英語科は主任の水谷以外は全員女性だ。女性教師の数の多さから、英語業界では男の方が仕事が見つけやすいと言われるが、なかなか現実は厳しい。非英語ネイティブで大学で仕事が見つけられるのは、ほんの一握りの人間だ。高校の非常勤の仕事も、浜野の紹介でようやく手に入れたのだ。英語学校の仕事は嫌いではないが、高校の先生というステータスにはずっと憧れていた。

 仕事も二週目になり、ようやくこの高校の授業にも慣れてきた。生徒の真剣さは英語学校の方が断然上だった。自分で授業料を払って勉強する大人と高校生を比べるのは筋違いだろうが。そういえば自分も高校生のころはよく居眠りをしていたものだ。

 月曜と木曜以外の平日の夜と土日は英語学校の仕事がある。完全なオフは月曜のみだ。貴重な昨日のオフはも英語学校の仕事でつぶれ、ベッドに入ったのは朝の4時だった。オーバーワークなのかもしれないと思いつつ、体にムチを入れて仕事を始めた。


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